註1──劇作家・劇評家。岡鹿之助(洋画家)の父。本人はいたって親切で面倒見のよい好人物であったが、その劇評は名前どおり《鬼》のように辛辣をきわめた。歌舞伎の名題役者(なだいやくしゃ=看板スター)に対しても、針の筵(むしろ)に座らせるような、生きた心地もない批評で恐れられ、「まずまずの出来」──と評価(傍点)されようものなら、鬼の首を取ったような《大金星》であったらしい。明治後期から昭和十年代までの歌舞伎役者は、鬼太郎の批評に《叩かれないため》に、必死の研鑽を積み、人気に慢心する事を免れた。つまり閻魔大王のように恐れられながら演劇界の御意見番として最大の功労者であった。
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